工場の実データからLTIFとTRIRを計算する方法
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LTIFは、期間中の休業災害の件数に1,000,000を掛け、同じ期間に実際に働いた延べ労働時間で割って求めます。TRIRは記録対象災害の件数を使い、基準は200,000時間です。どちらの率も、次の二つの要素で決まります。どの事象を数えるかを書面にしたルールと、勤怠記録から取った労働時間です。まずこの二つを整え、すべての事象を分類し、いくつかの先行指標と並べて率を報告します。
同じ工場でLTIFが三つに分かれる理由
例(説明用の数値):同じ拠点の同じ年について、安全衛生マネージャーはLTIFを4.4、工場の管理会計担当は3.6、グループの報告書は2.9と報告しています。
- 安全衛生担当は休業災害を3件と数え、労働時間を勤怠システムから取っています。
- 管理会計は同じ3件を数えていますが、人員数に標準的な年間労働時間を掛けた値を使っているため、誰も働いていない時間まで加わっています。
- グループの報告書では、応急手当に分類し直された災害が1件抜けています。
分子、分母、分類ルールを書面にするまでは、どの数字も他の拠点と比べられません。定義カードの考え方そのものは工場のリアルタイムKPIシステムの作り方で説明しています。本記事では、それを安全の指標に当てはめます。
- 従業員
- 420
- 延べ実労働時間
- 680,000
- 休業災害
- 3
- 死亡
- はい
- 休業災害
- はい
- 医療処置
- いいえ
- 応急手当
- いいえ
- ヒヤリハット
- いいえ
説明用の例:従業員420人の工場で、12か月間の延べ実労働時間は680,000時間です。
計算式とその出典
| 指標 | 計算式 | 基準 | 出典 |
|---|---|---|---|
| LTIF(休業災害度数率) | 休業災害件数 × 1,000,000 / 延べ実労働時間 | 1,000,000時間 | ILOの度数率、第16回国際労働統計家会議(ICLS)決議(1998年) |
| TRIR(記録対象災害発生率) | 記録対象災害件数 × 200,000 / 延べ実労働時間 | 200,000時間 | 米国労働統計局(BLS)の発生率、OSHAの記録保存規則 |
| 損失日数率(ILO、100万時間あたり) | 労働損失日数 × 1,000,000 / 延べ実労働時間 | 1,000,000時間 | ILO、一時的な労働不能のみ |
| 年千人率(ILO) | 新規発生件数 × 1,000 / 対象集団の労働者数 | 労働者1,000人 | ILO、労働時間が得られない場合 |
労働災害統計に関するILOの決議では、新規発生件数を対象集団の労働者が働いた延べ労働時間で割り、1,000,000を掛けます。米国労働統計局(BLS)が200,000を使うのは、この数字がフルタイム従業員100人が週40時間、年50週働いた時間に等しいからです。
二つの数字を比べる前に、基準を確認してください。同じ事象でも、1,000,000時間あたりの率は200,000時間あたりの率の5倍になります。
ステップ1:休業災害に数えるものを書面にする
分子には、班長が災害当日に判断できるルールが必要です。出発点になるのは、公表されている次の二つの定義です。
- ILO:死亡以外の災害は、災害当日を除いて1日以上の休業を伴う場合に数えます。労働損失日数は、災害の翌日から職場復帰の前日までです。
- OSHA:死亡、休業、就業制限または他の職務への配置転換、応急手当を超える医療処置、意識喪失のいずれかに至った場合、または医師その他の免許を持つ医療専門家が重大なけがや疾病と診断した場合に、記録対象になります。休業日数も、けがの翌日から数えます。
ルールカードには4つの項目を書きます。何をもって休業災害とするか、何をもって記録対象とするか、誰がいつまでに分類するか、分類が変わったときにどうするか、です。いちばん大事なのは最後の項目です。応急手当として扱った事例が3日後に休業災害に変われば、災害が起きた月の率が変わります。
ステップ2:労働時間を勤怠から取る
BLSの手引きによれば、労働時間には、休暇、病気休暇、祝日など、有給であっても働いていない時間を含めるべきではありません。ILOも実労働時間を優先し、所定労働時間を使うのは実労働時間が得られない場合に限っています。人員数に標準的な年間労働時間を掛けた値には、祝日、病気休暇、欠員まで含まれるため、労働時間が過大になり、率は低く出ます。
例(説明用の数値):従業員420人の工場で、12か月間の延べ実労働時間が680,000時間、休業災害が3件だったとします。
| 分母 | 時間 | LTIF |
|---|---|---|
| 勤怠記録 | 680,000 | 3 × 1,000,000 / 680,000 = 4.41 |
| 人員数 × 2,000時間 | 840,000 | 3 × 1,000,000 / 840,000 = 3.57 |
災害は同じ3件でも、推計値を使うと率は約19%低く出ます。推計せざるを得ない場合は、すべての報告書でその数字が推計であることを明記してください。また、臨時、派遣、協力会社の作業者は、分子にも分母にも同じ基準で含めます。
ステップ3:すべての事象を一つの区分に分類する
率が表すのは、災害ピラミッドの一つの区分だけです。率を前後の区分と合わせて読めるよう、すべての区分を残しておきます。
| 区分 | LTIFに含める | TRIR型の率に含める |
|---|---|---|
| 死亡 | はい | はい |
| 休業災害 | はい | はい |
| 就業制限または配置転換 | いいえ | はい |
| 応急手当を超える医療処置 | いいえ | はい |
| 応急手当 | いいえ | いいえ |
| ヒヤリハット | いいえ | いいえ |
| 未分類 | 分類されるまで含めない | 分類されるまで含めない |
「未分類」は独立した行として残します。区分の合計が台帳の事象数より少なければ、事象が抜け落ちており、率は実際より低くなっています。この行が空になるまで、毎月の安全会議で確認してください。こうした記録を追跡できる状態に保つ方法は、AIを含む工場の判断について、監査に耐える記録を残す方法で説明しています。
オペレーターが報告した避難通路が物でふさがれているといった不安全状態は、対策を講じて解消すべき危険源として台帳に記録します。けがではないので、どちらの率にも含めません。
ステップ4:先行指標と並べて率を報告する
先行指標に関するOSHAの手引きは、遅行指標をけがの件数や率など、過去に起きた事象を測る指標とし、先行指標を災害が起きる前に予防措置を取れるようにする指標としています。挙げられている例の一つが、危険の報告に対応するまでにかかる時間です。
従業員数百人の工場なら、1年間休業災害が出ないこともあります。そのため月次のLTIFは、1件の事象でゼロと高い値の間を行き来します。OEEだけでは足りないと同じ考え方で、毎週動く指標と組み合わせてください。
- ヒヤリハットの報告件数と、報告からレビューまでの時間
- 計画した点検の実施件数と、重大度別の未解決の指摘事項
- 期限内に完了した是正処置
- 計画に対する危険源対策の実施状況
DBR77 IRISでの仕組み
IRIS HSEは、自らの台帳から安全KPIを計算し、KPIの値を画面で手入力する欄はありません。安全KPI画面には、LTIF、休業災害件数、ヒヤリハット報告件数、点検実施率、是正処置完了率、最後の休業災害からの日数、未解決のインシデントが表示されます。
LTIFは上で説明した計算式(休業災害件数 × 1,000,000 / 延べ実労働時間)を使い、直近12か月の移動期間で計算します。画面には労働時間の数値とその取得元が表示されます。取得元はIRIS Peopleの勤怠台帳です。労働時間を勤怠から取っているので、分母は監査人がたどれる数字になります。
災害ピラミッドには、死亡、休業、医療処置、応急手当、ヒヤリハットの区分に加えて「未分類」の行があり、区分の合計が事象数と一致します。ダッシュボードとピラミッドのヒヤリハット件数は同じ定義で数えます。ヒヤリハットの報告は一件ずつ画面上でレビューされ、IRIS Tasksにレビュータスクが作成されます。指摘からタスクへのこのつながりは、信号からタスク、そして完了へで説明したループと同じです。
インシデントは、IRIS Gembaの現場アラートから自動で起票することもできます。現場アラートから作成されたインシデントは不安全状態に分類されるため、ピラミッドにもLTIFにも入りません。IRIS HSEは1時間ごとに、直近12か月の休業災害件数をIRIS KPIに送ります。その期間にインシデントも、ヒヤリハットの報告も、予定された点検もない工場には値が記録されないため、データがないことが「災害ゼロ」として表示されることはありません。
IRIS HSEはTRIRやDARTを計算せず、規制当局向けのインシデント分類も行いません。インシデントの入力フォームにはOSHAの記録対象の判定もRIDDORの分類もなく、KPIは事象の重大度に基づいています。TRIRを報告する場合は、記録対象かどうかの判断を自社の手順の中で行ってください。安全教育タブは、元になるデータソースがなければ空のままです。データソースの候補はLMSで実施する安全教育で、IRISがこのタブを架空の数字で埋めることはありません。
よくある質問
労働時間がなくてもLTIFは計算できますか?
度数率としては計算できません。文書化された代替指標はILOの年千人率(労働者1,000人あたり)で、使う場合はその旨を明記します。労働時間の推計値しかない場合は、数字の横にそう書いてください。
LTIFとLTIRは同じものですか?
名称の使い方はまちまちです。ILOの度数率は1,000,000時間、BLSの発生率は200,000時間を基準にしているので、公表するすべての数字に基準を併記してください。
ヒヤリハットはLTIFに含めますか?
含めません。ヒヤリハットはピラミッドと先行指標に入れ、各報告がレビューを待っている時間も合わせて示します。
率はどのくらいの頻度で再計算すべきですか?
毎月更新する直近12か月の数字は、1か月単位の数字より1件の事象に左右されにくくなります。事例の分類が変わったときに過去の月の数値を遡って修正するかどうかをルールカードで決め、どちらにしたかを報告書に明記してください。
まとめ
LTIFもTRIRも、けがの分類ルールと実際に働いた労働時間という二つの要素から求める短い計算式です。ルールを書面にし、労働時間を勤怠から取り、すべての事象をピラミッドの一つの区分に入れます。「未分類」の行を設け、空になるまで処理します。そのうえで、毎週動く先行指標と並べて率を報告してください。労働時間が推計値なら、報告書にそう明記します。
出典
- International Labour Organization, Resolution concerning statistics of occupational injuries resulting from occupational accidents, 16th International Conference of Labour Statisticians, 1998 (text of the resolution)
- U.S. Bureau of Labor Statistics, How To Compute Your Firm's Incidence Rate for Safety Management
- OSHA, 29 CFR 1904.7, General recording criteria
- OSHA, Using Leading Indicators to Improve Safety and Health Outcomes, OSHA 3970, June 2019
- Health and Safety Executive (UK), RIDDOR: Reporting of Injuries, Diseases and Dangerous Occurrences Regulations